「荀彧・・、どうにからなんのか、この仕事は・・。」
部屋いっぱいに置かれた書簡の山に囲まれ、曹操はだるそうにため息をつきながら言った。
「駄目ですよ!だいたい、ためておく殿が悪いんですからね!」
そういいながら、荀彧は書簡に目を通す。
元はといえば、先日、「視察」と称して、曹操が逃走し、軍師や文官にその仕事が全て回って来てしまい、そのツケをこうして曹操はやらされているのだ。これは自業自得である。
しかし、曹操は先ほどから、手を進めようとしない。その様子に困った荀彧は、書簡の端にさらさらと何か書き足すと、まるで子供のような笑顔で言った。
「あいや~、そろそろ、郭嘉の元に行かねばなりません。遅れると郭嘉は怖いですからね~。」
「おい、荀彧。この書簡を俺に押し付けるつもりか?」
「しかたありませんよ、殿。あっ、これは私が見ておいたので、後で目を通してくださいね~。」
と言って曹操の制止も聞かず、そのまま荀彧は去っていってしまった。
「あいつも意外と意地悪だな・・。」
そうつぶやいて、曹操は荀彧が手渡した書簡を見ると、にやりと笑い、先ほどとは打って変わって、熱心に仕事を始めた。
その日、猛烈な勢いで、仕事をする主君と王佐の姿を多数の人物が目撃した。
次の日、荀彧は自分の仕事を終わらせるとすぐに着替え、足早に曹操の執務室へと向かった。
「殿~。」
そこには執務を終え、着替えていた曹操が、待っていた。
「荀彧、今日はとっておきの場所に連れって行ってやる。せっかくに視察だからな。」
「あいや~、殿の取って置きの場所とは、それは期待ができますね。」
と言って、笑って、二人はひそかに市へ向かった。
その日の夕方、諸文官、軍師とともに曹操と荀彧を探していた郭嘉は、荀彧の字で
「明日、二人で出かけましょう。」
と書いてある書簡を見つけ、後で遊びに行った二人を、夏侯惇、程昱とともに烈火のごとく怒るのは別の話。
・・・なんだこの文は・・。ヘタレすぎだろう・・。もっと修行します・・(涙)
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